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英国はLondon出身の弱冠23歳、にしてもうUKシーンの重要なProducerと目されているLabrinthの記念すべきデビューアルバム『Electronic Earth』を御紹介。このLabrinth、僕が彼を初めて意識したのはやはりTinie Tempahの大ヒット曲「Pass Out」と、Labrinth自身も客演参加している「Frisky」。Labrinthは電子音をフル稼働させたアグレッシヴなビートを提供、これがかーなーりー僕のツボでした(完敗)。という訳で本国ではかなりの知名度を誇っているらしい気鋭のビートメイカー、ちなみにUKアルバムチャートで見事第二位を獲得、まさかLabrinthがシンガーソングライターだったとは(驚)。ちなみに中身のアートワークを確認すると、電光輝く近未来都市みたいなのが描かれているのですが、その中に登場する看板にチラホラ日本語があって。“フレンチキス”とか“世界中を旅する”とか、挙句の果てには“グルーヴをちょうだい”なんて文言も......はて(笑)?
それでは簡素ではありますが聴いての感想をつらつらと・・・・・・まず全曲のソングライト&制作を担当しているのは他ならぬLabrinth自身、そしてCo制作としてDa Digglarが脇を固めている模様。まずはエコーのかかった教会チックな聖なる重なりフックが色鮮やかに響き渡る「Climb On Board」で幕開け、オルガン鍵盤を思い切りコツコツ叩く軽やかに踊るメロディと、ジワワワワと浸透し広がってゆく華美なシンセがドリーミーでグッド。その中でちょっぴりまろやかクリーミーに溶けるLabrinthのヘナっとしなるヴォーカルもお似合い、とにかくサビ部分でのズカチャカ連打ビートの応酬(でも後半ではレトロでとろんとした生音メロディが混在)が気持ち良い。昏倒してしまいそうな程に眩い電光石火が突き抜け、次第にライトセーバーみたいに物質化して曲線を描き唸りを上げる「Earthquake」もアグレッシヴでいてなんだかアンニュイ(反比例)。途中でゴシックなメロディ転調で静寂に包んでみたり、客演のTinie Tempahを投入して再び縦横無尽に暴れさせたり、とにかく一筋縄ではいかない一曲に。流星のごとく煌めきスルリと滑る電子音のズカズカしたメロディがカッコイイ「Last Time」は、どこかJohn Legendっぽい曇った円やかさを感じさせるLabrinthの歌声を、ダースベーダーよろしくサイバー加工したダンスチューン。ダイナミックかつ繊細な躍動感溢れるトラック&歌声で、これはきっと広大なアリーナ向きだなと痛感させてくれる突き抜けたアッパー。「Treatment」は80年代ポップを思わせるような爽快でいて壮大な自然味溢れるポップアップ、陽光みたいに燦々と輝き跳ねるLabrinthの蒼く麗しい清涼な歌声(でもどこかハスキー気味でクール)が胸を洗ってくれる壮麗な一曲でグッド。セピア色したモダンなHip Hopを気取った「Express Yourself」もキュートでロキッシュ、ダメージ加工を施したヴォーカルとピンク色の象がズシーンと歩き潰すようなビートなどが面白い。Labrinthがふわふわと柔らかなファルセット寸前なヴォーカルで囁き微睡む「Let The Sun Shine」はまた違ったエレクトロチューンで、ほんのり甘い薄荷キャンディーみたいな清涼感とスウィートさが混じったソフトメロウ、聴いている内に爪先が地面から3センチは浮き上がる軽やかさ。本作一番の注目曲はやはり、あのEmeli Sandeとの共演となったクラシカルなバラード「Breath Your Beautiful」でしょうね。緩やかで上品なストリングスを多用した聡明な美曲で、モノクロの想い出が(愛する女性の眩い笑顔が)スローモーションで消えてゆくような儚さ、永い昏睡からの目醒めみたいに目の眩みそうな輝きが美しい(溜息)。Emeli Sandeの華やかで爽やかな歌声に絡む、Labrinthのマイナー気味でハスキーがかったファルセットがたまらなく綺麗で切ない(涙)。ダークで歪んだ電子音の中で妖しく揺らめく煙のようなLabrinthのエフェクトヴォーカルが艶やかな「Sundown」も不思議、なんというか聴いていてソワソワする温度で焦らされる。ガウガウと噛み付きそうなシンセが低空を這うように飛行する「Sweet Riot」、これはもう完全にタフで血潮滾るデジタルロックチューン、なんですがLabrinthがフックで線の細い裏声で撫でるのが一癖あり、どこかN.E.R.D.っぽかったり。最後を飾るのはダカダカと叩く太鼓ビートが紡ぐエモーショナルがエコーのように響き意識を美しく蝕む「Vultures」、ここでもやはりLabrinthのぼんやりと朧げでいて、だけど澄み切ったウィスパーヴォーカルが優美に響いて胸を打つのです(無垢)。
んんーー良かった、確かにちょっと期待していたんですが、それを優雅に軽ーく超えましたよ(拍手)。なんというんでしょうか、メロディが意外としっかりしていて、エレクトロな中にもどこか英国ロックみたいな情動があったりして沁みる。ザクザクと尖ったエッヂービートの中にも、柔らかな端麗さがちらりと光るナイスなトラックメイク。もっとピコポコ電子ビートを重視したざく切りなポップアルバムに仕上げているかと思いきや、繊細かつ精巧で壊れそうな硝子細工みたいな美しいメロディが満載で、Labrinthも真面目に丁寧に歌い上げていて驚きました。とにかく独自の世界観があって心ゆくまで堪能できました、聴かずにスルーすると後悔するのでは......?
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テーマ : HIPHOP,R&B,REGGAE ジャンル : 音楽