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Oregon州はPortland出身の新人MC、Amineの記念すべきデビューアルバム『Good For You』を御紹介。エチオピア人とエリトリア人の移民の両親の間に生まれたというAmine、ずっとバスケットに専念したところ、相手チームをラップでディスしたのが周囲にウケ、ラッパーになることを志したのだそう。14年から15年にかけてミックステープなど三作を発表し、いまや毎年恒例の超重要な新人登竜門の“XXL Freshman Class 2017”にも選出されました。と書きましたが僕の中でAmineは全く記憶に無く、本作もなんとなく前情報無しに店頭に並んでいたから買ったという為体で御座います。というのも、大好きなNellyが客演参加していたからという。
という感じですのでライトな感想にはなりますが・・・・・・まずはJahaan SweetとPasqueが共同制作した「Veggies」では、Ty Dolla $ignが客演で参加。これが朝露を思わせる凛として瑞々しい音色を繋いだ前半部分と、軋むような金属的な板金トラックの二部構成で面白い。Amineの良い意味で脱力して柔らかなラップがブリキのように軽やかに響き、そこに例のオリーブオイルみたいなTy Dolla $ignのピュアグリーンな歌声がとろーりとかかる事でコクが生まれてグッド。まさにAmine色とも言える「Yellow」はFrank DukesとMetro Boominが共同制作(Co制作をMurda Beatz)し、客演にはNellyが参加という面白い人選。チューブから黄色の絵の具を練り出して、ぶりっとはみ出し塗ったようなべったりのカラフルさが輝く電子チューン。AmineのどこかLEGOブロックのように原色で角張った単語結合を思わせるラップも遊び心満載ですし、Nellyのあまりにもキュートでジューシーなフロウにも思わずニヤリ。全米11位を獲得する大ヒットとなった「Carline」はAmineとPasqueが共同制作、これはまずジェリービーンズみたく甘くて粒々としたAmineのラップが無条件に面白いんだけれど、ゼリー状の電子音をブアッブアッとだけ鳴らしカラカラとビートを転がすという、どこか全盛期のThe Neptunes的な抜け抜けスカスカなトラックの世界観が実に素晴らしい(虜)。そのPasqueとAmineが共同制作した「Hero」もやはり音数は少なくシンプルループ、そんなシンプルなギター弦の音色はまるで飛行機雲のように伸び、Amineのラップはどこまでも暢気に浮かび流れる綿飴みたいな雲のよう。ピカピカと瞬くシンセに抹香のように妖しく漂い広がるアジアンテイストな笛音がスパイシーな「Spice Girl」、Frank Dukes制作のこのトラックはやはりキレキレで、その癖にも負けないAmineのピリリと辛い刺激的なラップも妙味。「STFU」はVegynとAmineが共同制作しており、まるで水の中で聴く泡のコポコポ音にも似た電子音が浮かんでは消えるのが幻想的で、Amineのエフェクトも駆使しつつ歌ったり早口で駆けたりするラップも水と戯れ滑り泳ぐようで気持ちがいい。J Grammが制作した「Wedding Crashers」ではMigosよりOffsetが客演参加、こういう単純に可愛くおどけるトラックで聴くOffsetの三連符はまた違った味わいでナイス起用。またまたFrank Dukesが制作を担当した「Sundays」もトラックが凄く精巧で、湿度の高い異国のホテルの一室でレモネードを飲む様に、ビート後にもたれてラップをとろけさせるAmineの微睡んだラップも綺麗。「Turf」ではまさかのMalayが制作を担当したミッドで、遠くで聴こえる真夜中の海鳴りのようなトラックに、頬を撫でる潮風のように柔らかなAmineのラップが情緒豊か。Guy Lawrenceが制作を担当した「Blinds」はまるでATCQみたいなビートでこれも素晴らしく奥が深い、ぶるんと弾力のある鍵盤音を連ねたトラックの中で、Q-Tipを彷彿とさせる鼻にかかって甘美なAmineのラップがクール。再びMalayとPasqueが共同制作した「Dakota」には、なんと御大のCharlie Wilsonが客演参加。Malayらしい魔法が炸裂でまるで鉱石が輝くような不思議な光芒の中をAmineと進み、Charlie Wilsonの芳醇な歌声がぶっとい光の道を作るのが楽しい。「Slide」はJahaan SweetとAmineが共同制作しており、やはりゼリー状の電子音をボムボムと弾ませてAmineのジェリービーンズ的なラップが弾けるポップな一曲。PasqueとAmineが共同制作した「Money」は、だだ広い青のシンセの中をクールに遊泳するコズミックな一曲でやはり美しい。またまたFrank Dukesが制作を担当した「Beach Boy」も鍵盤音がパチパチとシャンパンの泡のように弾けるのがオシャレで、どこかPharrellにも通じるポップで色鮮やかなヴォーカルも最高にシンクロ。最後はボーナス曲扱いながら、あのKhelaniを客演に迎えた「Heebiejeebies」を準備。Jahaan Sweetが制作のトラックはやはり炭酸ジュースのようにカラフルできりりと冷えた感触のR&Bマナーなミッドで、AmineとKhelaniの透明感のある水彩絵の具のようなヴォーカルの混じり合いもナイス。
なんだこのアルバム、めちゃめちゃカッコイイじゃないですか(不意打)。AmineのLEGOブロックのようにカチリと結合させるカラフルなラップも良いんですが、やはり結構な芸術点を誇る(特にFrank Dukes!)トラック群が素晴らしい。そんな色鮮やかで多様なトラック群に臆せず、乗っかり並走し寝そべり泳ぐとAmineもなかなかの曲者でグッド。なんとなくMac Millerあたりを楽しめる方は、素直に面白いと感じるんじゃないでしょうか、聴いていない方は是非とも。
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テーマ : HIPHOP,R&B,REGGAE ジャンル : 音楽